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顔なじみ
学生時代、カメラ屋でアルバイトをしていました。やがて店のおやじが常連と一緒にカメラクラブを作ると、例会だ撮影会だと年長の人たちについて歩きました。フィルムや印画紙などはこの店で買えばよいのですが、カメラとなると別にメーカーへのツテが必要でした。
住んでいた大岡山には電車の駅をはさんで2軒の運動具屋がありました。夏場は野球チームがはばを利かせているので寄りつかないのですが、秋口からは毎日なかを覗かずには通過できなくなります。誰かいれば入り込んで新しい道具のこと、テクニックの話などが始まります。こちらにもだんだん常連が増えて一緒にスキーツアーに出かけたりするようになります。店のおやじさんの性格でメンバ−の顔ぶれもも異なり、クラブにもそれぞれのカラーができてきます。
診療室の近くには登山・スキーの専門店がありました。商品もお客のレベルも住宅地とは違って先鋭的です。店員もいつか分からぬヒマラヤ遠征のため、黙々と働いているような連中ですから一風変わっています。
何の話をしたいのだ!とお思いでしょう。1950年代から80年代ぐらいまで、私達はこんなお店で買い物をしたり食事をしたりしていました。それぞれの店に出かけることは買い物半分、人と会って話をすること半分だったのです。ところがこうした楽しみを感じさせてくれる小さなお店が、ポツリポツリ姿を消していきました。始めは新旧交代か?などと思っていました。しかし波は次第に大きくなり、呑み込んだ大型店が、今度は呑み込まれる側に立たされるという繰り返しの中で、店の顔も人の顔も消えていきました。いま「顔なじみ」のお店で買い物をしたり飲食をしたりすることはほとんどできなくなりました。
買い物ではポイントカードの優劣だけが店を決めます。安くておいしければ良いではないか!とばかり飲み屋のメニューも内装も新幹線の駅のようにモノトーンです。あの店で!あの人から!と心ときめかせた新型カメラの買い物も今はほとんど自動販売機です。こんな味気ない世界いつまで続くのでしょう?
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