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しかし、ようやく鋳造冠が臨床に導入され始めたばかりの50年前には、歯冠色の修復は既成陶歯を使う継続歯しかありませんでした。そのため多少のメタル露出を容認するか、保存できる歯質も切断するかの選択を迫られました。
大きな期待を背負って始まったジャケットクラウンでしたが、次の悩みは頻発する破折でした。色調も透明度も申し分なく患者さんにも気に入っていただけるのですが、ある日突然起こる破折は両者にとってショックでした。アルミナスのコア材を用いたり、右下の写真のようにアルミナスのプレートを埋め込んで焼成したりもしましたが、見るべき効果は上がりませんでした。
ショッキングな破折は回避できるものの、メタルの影響による色調の悪さや不透明感が嫌いで、最後までジャケットクラウンにこだわっていました。左の図はメタルボンドの断面図ですが、メタルフレームとその色調を遮断するために不透明なオペーカーを使いますから、ジャケットクラウンのようなわけにはゆきません。とくに歯頚部付近が問題になることはこの後あちこちで見て頂けます。
4前歯の中3歯は失活歯でしたが左中切歯だけは有髄歯で欠損も大きくありませんでした。仕上がりを良くするには4本そろえて処置したかったのですが、有髄歯をクラウンの仲間に引き込むことには抵抗がありました。残した1本のために色調再現には苦労しましたが3回目で終わりにしました。
これまでの陶材作業は前掲の写真のように作業模型に白金箔を圧接し、その上に陶材を盛ってファーネスに入れ焼成を繰り返して完成させていました。1990年代に入るとキャスタブルセラミックスと呼ばれる新素材がいくつか登場してきました。メタル鋳造と同し術式で鋳型の中にセラミックスを注入または圧入するというものでわれわれには馴染みやすいものでした。さらに素材自体の物性が格段に向上しているというふれ込みに、歯冠修復の常識が変わるのではないかという期待を抱いてしまいました。
図1. 最初の画像は30代の女性で歯並びに若干の乱れはありますが、美しい歯が維持されています。唯一矢印の下の部分に小さな充填がされて変色していることだけが気になりますが、この状態であれば再充填するだけで本来の美しさを回復することができるでしょう。下顎前歯の噛み合わせなどに気をつけていかれれば、健康な歯肉も併せもって生涯大きなトラブルもなく過ごされることでしょう
図2.2枚目の画像は20代の男性です。永久歯がつくられてくる時期に薬の影響があったりすると、歯にこのような着色が起こることがあるといわれています。このケースは犬歯付近の変色がひどく正中部はあまり強い変色がないので良かったのですが、ご本人は周りの人以上に気にされるものです。もちろん虫歯ではありませんからこれ以上ひどくはならないのですが、どうしても直したいとなるとその部分だけを漂白することになります。最近はホワイトニングなどという名前で広く使われていますが、歯質を白濁させるために強い薬品を使いますから、私たちはどうしてもという強いご要望がある場合以外は使いたくありません。選択的に行う時はその移行をどうするかもむずかしい問題です。
図3.この画像は60代の女性ですが問題は少し深刻です。噛み合わせの問題はさておくとしても、歯の表裏にいくつもの大きな充填がされており、変色しているものも少なくありません。変色した部分以外もほとんどの表面がコンポジットレジンで、光沢のある歯の先端付近だけがエナメル質でした。